反りが合わないことを悟った妻が選んだ道
永見武弘は妻の春奈に向かって手を差し伸べ、その春奈は武弘のことを、知り合った当時と同じ呼び方で呼んだ。 永見武弘は一瞬怪訝な顔をしたが、愁いを込め名字で呼ばれたことに逆に気を良くした。 恋人同士に戻って、人生をやり直そうと妻の春奈は考えてくれているように思えた。 武弘はそう感じ取ったが当の春奈はそうではなかった。 これから先、必要な分必要なだけ掠め取り、必要なくなったら捨てればよいと、あの刹那に思い描いてしまっていた。
外で悪さをして帰った直後、春奈は烈火の如く怒るのが常だが、しばらく時間が経つと、また穏やかな妻に舞い戻る。 今回の件もきっとそうに違いないと考えた武弘は、あまり深く考えず妻を再びベッドに誘った。 自分が悪いのではなく妻が悪かったのだ。 尊大な気持ちになって不貞を働いた妻を許す気になった。 たったそれだけのことであったが、武弘は女になり切った風な妻を見て、漲らせてしまっていた。
「春奈、お前も知っての通り、俺は仕事で疲れてたんだ。 ほっておいて悪かった。 今はお前のことを心から心配しとる」
武弘のこの詫びに似た言葉を、春奈はぼんやりと訊いていた。 このような状態になってなお、武弘の言い分は夫婦の危機に至る以前と少しも変わらなかった。
「もう二度とこんな騒ぎを起こしたくない。 なあ、今一度確かめ合うことは出来ないものだろうか。 春奈を誰にも渡したくないんだ」
まりあ 19番ホール Shyrock作
幸いボールは見つかったが周囲に木々が繁り少々打ちにくそうだ。
木立の間からグリーンの端が辛うじて覗いている。
グリーンまでの距離は80メートル程度あるだろうか。
先程まで見えていた望月夫妻の姿が木の陰になって見えなくなっている。
(どのクラブを使えば良いのだろうか…)
まりあがクラブの選択を迷っていると、彼女の心を見透かしたかのように車本が声を掛けてきた。
「阿部さん、アプローチウェッジは持ってますか?」
「え~と…これですか?」
「そうそう、これです。100メートル以内のショットで使うクラブは、ピッチングウェッジかサンドウェッジが一般的ですが、ここはアプローチウェッジで攻める方が良いと思いますよ」
「はい、分かりました。ウェッジと名前がついているクラブだけでも色々とあるのですね」
「ええ、結構ありますよ。バンカーから抜けるためのクラブがサンドウェッジで、グリーンの周りからグリーンを狙うクラブがピッチングウェッジです。それから、今阿部さんが持っておられるクラブがアプローチウェッジと言って、ピッチングではグリーンに届かないけど、9番アイアンでは打ちにくい、という時のためのクラブなんです。あと、グリーンの近くから高く緩い球を打つためのロブウェッジというのもあります」
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アップデート 2024/02/21 12:45
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