義母の気を惹こうと踏ん張る父と息子
この物語に登場する金衛門という漢は一徹者で隣近所でも一筋縄ではいかなかった。 人一倍荒くれ仕事をこなしてはくれるものの、その荒んだ気持ちを鎮めるにはイカの塩辛と焼酎が無いことには治まりがつかなかった。
一山超えた向こう隣の勘助が常会の回覧を持ってきてついでに酒の勧進をと勧めた。 集落の長の言葉をオウム返しに妻の蔦世は金衛門に告げただけであったがいきなり焼酎の瓶が宙を舞った。
「儂が焼酎しか飲まんと知ってその言い分かあ~」
と、勘助の前で怒鳴り上げたのである。
このような状態が続けば身が持つはずもなく蔦世は勘助に付き従ってどこぞに夜逃げ、仕方なく金衛門は身内の出戻りを飯炊きとして家に入れた。
官能小説『蛇の毒』 第1章 蛇に噛まれて
夏の昼下がり、栄治は木陰の隠れ家でうたた寝をしていた。ようやく高校も夏休み
に入り、昨日から信州の山の家に姉の靖子と二人で来ているのである。山の家と言っ
ても別荘などとは程遠い、たった六坪の小さなもので、屋根裏が寝室として使われて
いた。トイレは外の別棟、風呂はドラム缶を利用した五右衛門風呂で、家から少し離
れた庭先に置かれている。
敷地だけは広かった。値段に釣られて栄治の父親が千二百坪の山林を坪五千円で購
入したのである。千二百坪と言っても平らな部分はせいぜい二百坪。残りはやっと降
りられるかどうかの急斜面が谷底の小川まで続いている。おまけに北斜面なので値段
が安かったのだろう。二百坪が六百万で残りの斜面はおまけ、そんなところだ。そう
は言っても、斜面の坪数は平地に換算するので実際の地表はかなりな広さである。土
地を衝動買いして建物を自力で建てるまでは熱心だった父親も最近は殆ど来ない。一
番よく利用しているのが栄治と姉の靖子だった。
裏の斜面は栄治には格好の遊び場だった。ひとたび斜面を降り始めればそこは周り
から完全に隔離された別世界になる。斜面には一抱えもある楢やクヌギ、山桜等が生
い茂っていた。
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アップデート 2024/02/21 12:45
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