四畳半での謝礼 ~猟犬の如く~
美香と日ごと夜ごと肌を合わせるうちに哲也は、彼女が自国民にはない独特の感性の持ち主であることを感じ取っていた。
他の女たちと違い、相手が変わると明確に態度まで変わる。 美香が有馬に誘われこの部屋を訪れ、最初に相手した漢どもにはどちらかというと性具のような扱いをした。
ところがひとたび相手が哲也に代わると、途端にまるで借りてきた猫のようにへつらう。 強かった女が、如何にも弱弱しい態度に出て媚び始める。
自国民がよくやる、富は残らず搾り取る。 そのためのへつらいではない。 自分の持っているものを全て捧げ、崇め奉ろうとする。
(妙な感覚ってやつか…いったい美香は何をしに俺の前に…)
漢は恋する女を前にすると、まずもって自分の方を向かせようとする。 自分がいかに優れてるか魅せ付け、振り向くと今度は肉体関係に持ち込もうとする。 他の漢に比べ、いかに自分が優れているか魅せ付けようとする。
それらすべてに合格点がついて初めて余裕が生まれ、改めて彼女の生い立ちなりを、今度は彼女の生まれ育った環境を受け入れるべく顧みる。
(あいつを…あいつが親しくしていた先輩を洗えか…)
幼少の頃、とかく周囲の人々は、恐らくこれから後を追うことになるであろう国の人々を侮蔑した。 両親も、悪いとは知りつつ周囲の人々に同調した。 子供らを育てるために収入や、もちろん貴重な食料を得なばならなかったからだ。
(もしも追うようなことになれば、親父の元に旅立ってしまったおふくろも、さぞかし嘆くだろうなあ…)
おばちゃんのおせっかいで、世間並みの、いや、世間様以上の生活を取り戻しかけたかに思えたそれを、全てかなぐり捨てて、またあのバッグに昔使っていたものを詰め始めた。
(あいつが俺に近づいた理由か…敵国の漢と分かっていて、それでも諦めきれ仲ってわけか…)
恩には恩んで報いねばと、重い腰を上げ最初の出発点となった公園に出向いた。
彼女を追っていたであろう畠山あかりもまた、彼女同様この公園の廃屋で執り行われるという身売りの現場を押さえるため乗り込んでいただろうと思われたからだ。
(…ん? 待てよ…ということは…)
あかりがここに来るであろうことを、事前に誰かが漢なり団体なりに教えておかねば偶然ふたりっきりで落ち合うことなどできない。
(それが誰かってことか…チクったら徳になる奴がいたってわけか…)
楽してカネ儲けとは到底言い難い。 いくばくかのお金のために、自分がこれまで大切に守って来た何かを失うことにもなりかねない。
(そうまでしてカネが欲しかったヤツ…そうか…まさかとは思ったが…)
手がかりをつかむため、哲也は過去、何らかの事件があった場所に出向き、片っ端から証拠物件を探し始めた。 どんな些細な証拠でも、事件の糸口はそこから始まるからだ。
後を追うにしても二通りあった。 女どもが春をひさぐために出向く場所と、もうひとつは快楽を高めるための薬 物を手に入れる場所。
哲也はその中の春をひさぐをまず追うことにした。 ナースの職を辞してからというもの、彼女が生きていくための費用は、恐らくそこからねん出していたんじゃなかろうかと思えたからだ。
(う~ん…こうなると我が家に出入りする女どもに訊くしかないか…)
蛇の道は蛇、カネ儲けであろうが漢欲しさであろうが、要は欲望に満ちた漢どもがハメることが出来る女を求め向かう場所でなければ意味がない。 画一的な歓楽街では女に性液を注ぎ込むことは、周囲の見張りが厳しくて出来ないからだ。
(もうひとつあったな…いったい何処で雨露を凌いでいたかということだ)
そこまで考えると思い至るのは廃屋しかなかった。 それも趣向を凝らしたものでなければ漢がその気になれない。 おどろおどろしくては勃たないからだ。
「そんなんに子難しいこと、今どきの女が考えるかなあ…安アパートの一室に漢を誘い込むのが一般的じゃない? ウチらは亭主いるから無理だけど…」
やってる奴いるから、教えてやろうかと言われ、ノコノコついていった。 そこは女どもが口をそろえて語る、まさに私娼窟そのものだった。
狭い部屋をそれなりに飾り立ててはいるが、それらのほとんどが安物。 漢と女が横になれば、もう余裕がないほど狭い一室だった。
幾人もの漢を、連日引っ張り込むんだろう。 淫臭というより、饐えた匂いがした。
「あんたは簡単にいうけど、実際にはそう簡単じゃないんだよ」
「どうして? 何が簡単じゃないと?」
哲也の問いに、あんたの部屋は漢がでなく、女が快楽を求め集う。 その逆となると漢を喜ばさなきゃならないと言い出した。
「お○んこを晒してやれば、後は勝手に突っ込んで果てるんじゃ…」
言いかけたのを制し
「そんなんでお金払うヤワな漢、今どきいる? 女が芸しなきゃ、逝ってくれないのさ」
それがどれほど体力使うか、知ってるかと問われ暗澹とした。 来る漢、来る漢、その全てに気を逝かせていては体力が持つわけがない。
「だあから、あんたじゃ無理だってえ、素直過ぎるもん。 そんなに気になるワケ? あの女」
詰め寄られ、返す言葉に窮した。 こうなった時、結局抱いてなだめすかすしかないからだ。
(こんな調子じゃ捜索どころじゃないぞ…これは…)
結局四畳半に引き返し、御指南を仰ぐべくその女を抱くことになってしまった。
A married woman who feels sexually excited
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tag : 日ごと夜ごと肌を合わせ独特の感性の持ち主性具のような扱い弱弱しい態度に出て媚び魅せ付け身売り楽してカネ儲け春をひさぐ淫臭御指南を仰ぐ
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アップデート 2024/02/21 12:45
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