シチリアの熱い風 第7話“卵形のチョコレート” Shyrock作
久しぶりに会うというのに、すっぴんのままなんて・・・
(少し早めに連絡をくれればいいのに)
私は大きく息を吸って、玄関ドアをノブを握った。
胸の鼓動が自分でも分かるほど、激しく脈を打ってる。
ドアを開けると、そこには懐かしい顔があった。
少し日に焼けたようだが、笑顔はあの時のままだ。
手にはラッピングをした大きな包みを持って立っている。
「イヴ、元気かい?マジで心配してたよ。ひとことぐらい言ってくれても良かったのに」
「そんなぁ~・・・。別れた人に行き先を言って旅立つ人なんていないわ~。でも嬉しいわ。よく来てくれたわね」
「イヴ・・・」
「なに?」
「相変わらずきれいだね」
「もう!急に来るから、化粧をする暇がなかったじゃないの~。ちょっと早めに電話をくれたらいいのに~」
「あぁ、そうだったね。ごめんね。でも・・・」
「でも?でもなあに?」
「君は化粧をしなくても充分に美しいよ」
「う、もう!口だけは上手いんだからぁ~」
「いや、お世辞じゃないよ」
「そうなんだ。嬉しい・・・」
「あの」
「なに?」
「あの、部屋に入れてくれない?立ち話もなんだし」
「あっ!ごめん!気が利かなくて。どうぞ、入って」
本当は真横に腰を掛けたかったけど、私から別れの言葉を切り出したことから、些かの遠慮が私の胸をよぎった。
彼は手に持っていたラッピングをした大きな包みを差し出した。
「あの、これを受け取ってくれないか?」
「え?なに・・・?」
「君へのプレゼントだ」
「どうして?どうして別れた女にプレゼントするの?」
「まあ、そんな硬いことは言わないでとにかく開けて」
ためらいはあったものの、そのまま返す訳にも行かず、ラッピングのリボンを解くことにした。
リボンがテーブルの上でパラリと解ける。
そして大きな箱の中の蓋を取った。
「ええ?これなに?卵?それもチョコレートでできた・・・」
どうしてチョコレートなんかくれるんだろう。
バレンタインデーでもなければホワイトデーでもない。
私は卵形のチョコレートを眺めながら首をかしげた。
彼は私をじっと見つめて、静かに語り始めた。
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アップデート 2024/02/21 12:45
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