第8話“復活祭” Shyrock作

「クレモナのパスクァって知ってる?キリスト教の復活祭のことなんだけど」
「ええ、知ってるわ。でも確か4月20日頃じゃなかった?今はもう9月よ」
「うん、そのとおり。復活祭は4月19日、20日のヨーロッパ全土で行われるキリスト教の祭りなんだ。キリストが十字架に処刑され、埋葬された後、復活して甦ったとされる記念日なんだ。その日に親しい人に贈るのが、UOVA DI PASCUA・・・つまりパスクァの卵なんだ」
俊介はキリストの復活祭のことを説明し始めたが、私たちとどういう関係があるのだろうか。
チョコレートはとても大きくて、高さが60cmほどある。
俊介は説明を中断して、バッグから木のハンマーを取り出した。
「イヴ、このハンマーでチョコレートを割ってごらん」
「え?チョコレートを割るの?」
私は彼のいうままに、ハンマーを持ちチョコレートを割った。
卵形のチョコレートの中央には予め、割れ目が入っていたようで、いとも簡単に二つに割れてしまった。
そしてその中から透明の小さな箱が出てきた。
「その箱を開けてごらん」
私は小箱を手に取り、そっと開けてみた。
「えぇっ!なあに~!?これってダイアモンドの指輪じゃないの!?」
「え・・・?」
頬からは幾筋もの涙が伝った。
「イヴ・・・結婚してくれ」
私たちはフロントに連絡し、部屋をダブルに変更してもらった。
つまりホテル内の引越しである。
新しい部屋もベランダが南側に面していて、日当たりが良い。
「いい部屋だね」
「そうね。海も一望できるわね」
荷物をクローゼットに片付けた後、ソファに腰を掛けてコーヒーを飲んだ。
イタリアではコーヒーといえば普通エスプレッソだ。
私にとっては少し苦い。
早速ミルクをたっぷり注ぎ、シュガーをひとさじ入れる。
俊介はブラックのままでゆっくりとコーヒーカップを傾けている。
私は俊介にもジョルジョにも謝らなくてはならない。
口に含んだエスプレッソがひときわ苦く感じる。
再びミルクを継ぎ足す。
「俊介、あのぅ・・・、あなたに謝らなくてはいけないの・・・」
「どうしたの?急に改まって」
「私ね、浮気してたの、このシチリアで・・・」
「ふ~ん、そうなんだ。別にいいよ、オレ、イタリア男になんか負けね~からさ」
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Shyrock様からの投稿を読んでつくづく思います。
官能小説は様々あれどほぼほぼ現実にそう文体であり感心させられます。
流れが良いんですよ。 目をつむっていても情景が浮かんでくるような気がするんです。
知佳のブログの中で「美貌録」だけアクセスが伸びず対策にブロ友をと探し回りましたが現実の世界とはまるでそぐわない文章の羅列、あれを見る限りこのような文を愛読する人たちって余程世の中に対し不平不満を抱いてると思えて仕方がありません。
しかもその手の小説の方が圧倒的に人気を博している当たり書く方としても考えさせられます。 一般小説を読む人と官能小説とでは計り知れないほど隔たりがあるんですね。
探す方面と探す手法を考え直します。